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NEC、実践型/産官学連携が特徴のAI人材育成プログラムを紹介

NECが社内外を含むAI人材育成の取り組みについて説明。現時点ですでに1800人のAI人材を育成しており、2025年度までにこれを倍増させる考え。社外の学生や社会人向けに展開する「NECアカデミー for AI」の内容や、政府AI戦略に対するNECの貢献についても紹介した。


 NECは2020年12月17日、社内/社外を含むAI人材育成の取り組みについての説明会を開催した。同社ではこれまで「2020年度までに1000人のAI人材を育成すること」を目標としてきたが、現時点ですでに1800人の育成に成功。今後は2025年度までにこれを倍増させる考えを示した。

「NECアカデミー for AI」の特徴。実践型教育に特化したAI人材育成プログラムを提供する

説明を行った、NEC AI・アナリティクス事業部 AI人材育成センター センター長/NECアカデミー for AI 学長/シニアデータアナリストの孝忠(こうちゅう)大輔氏

9つの教育機会/機能を提供できる「NECアカデミー for AI」

 NECでは、2013年10月からAI人材育成に取り組んできた。2019年には「NECアカデミー for AI」を開講し、社外を対象にしたAI人材の育成をスタートさせた。体系的な学びの場だけではなく、実践経験の場や、人材交流の場もあわせて提供することで、「実社会で活躍できるAI人材」の育成に乗り出している。

NECにおけるAI人材育成の歩み。社内で培ってきたAI人材育成のメソッドを広く社外にも展開し始めている

 シニアデータアナリストでありNECアカデミー for AIの学長も兼務する、NEC AI・アナリティクス事業部 AI人材育成センター センター長の孝忠大輔氏は、「NECでは実践型教育に特化したAI人材育成プログラムを提供しており、7年間かけて培ったAI人材育成メソドロジーを活用しているのが特徴」だと説明する。

 AI人材は、AI案件の推進者であるコーディネータ、AI検討の上流対応を行うコンサルタント、データ分析の専門家であるエキスパート、業務およびビジネスへの実装を行うアーテキクトに分類されるが、NECではこのうちアーキテクトの育成に注力している。また孝忠氏は、外部人材の登用も進めているが、社内/社外人材の比率は9対1であり、「AI人材の外部からの登用は難しい」という実情も語る。

ひとくくりに「AI人材」といっても多様だが、NECではとくに業務/ビジネスへの実装を行う「アーキテクト」の育成に注力しているという

 NECアカデミー for AIでは、NECのデータサイエンティストがメンターとなって指導を行う。入学コースでは、経産省が認定する1年間の長期育成プログラムによる「実践型教育」を実施。さらに、NECグループの社員5500人も参加する「AI人材コミュニティ」や、100人以上の卒業生を持つ「老舗としての実績」を生かしているほか、政府AI戦略の実現に貢献するとともに、業界団体と連携し業界標準を作成するなどの取り組みによる「産学官連携」を特徴に掲げる。

 アカデミーの入学者には、「砂場」での自己学習機会に加えて、20日間の短期集中型「ブートキャンプ」、ビジネス力やデータサイエンス力も含めた専門スキルを習得する「研修プログラム」、分析コンテスト「NEC Analytics Challenge Cup」、実際のAIプロジェクトにおいてOJTを実施する「道場」、大学との連携で数理/統計/情報の学び直しを図る「リカレント教育」など9つの機能が提供される。「AI人材育成に必要な機能をワンストップで提供し、プロフェッショナルなAI人材を育成できる」(孝忠氏)。

「NECアカデミー for AI」の全体像。9種類の教育機会/機能をワンストップで提供する

 さらに2020年6月からは、同アカデミーのオンライン版である「NECアカデミー Online for AI」の提供も開始した。ここでは、政府の「AI戦略2019」に基づき発表された「数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)モデルカリキュラム」に準拠したAIリテラシー講座も提供しており、企業や自治体でも広く活用できるようにしている。

今年9月からはオンライン版アカデミーも提供開始した

※初出時のスライド資料に一部訂正があったため差し替えました。(2020年12月21日)

数理/データサイエンス/AI教育を推進する政府の「AI戦略2019」にも貢献

 NECの取り組みは政府のAI戦略に準拠したものであるため、孝忠氏は政府のAI戦略についても概要を説明した。

 政府のAI戦略2019(2019年6月発表)においては、数理/データサイエンス/AI教育を「リテラシー教育」「応用基礎教育」「エキスパート教育」の3階層で実施していくことが示されている。

 まず、すべての高等学校の卒業生が基礎的なリテラシーを習得することのほか、2025年には、すべての大学/高専生に対するリテラシー教育(年間50万人卒業規模)と専門分野で応用できる基礎の教育(年間25万人卒業規模)、年間100万人規模の社会人に対するリカレント教育、さらに年間2000人規模で大学院生や博士号取得者などに対するエキスパート教育も展開することを目標に掲げる。こうしたAI戦略は、内閣府/文科省/厚労省/経産省が連携しながら実施していくという。

政府「AI戦略2019」のうち、教育改革に向けた主な取り組み

 大学/高専向けの取り組みとしては、全国782の学校を6つの地域ブロックに分け、拠点校を中心に数理/データサイエンス/AI教育を実施していく。2020年4月にはリテラシー教育レベルの教育カリキュラムを公開しており、2021年4月には応用基礎レベルのカリキュラムも公開予定だという。さらに教育プログラムの認定制度を構築し、大学/高専が展開する優れた教育プログラムを政府が認定することも行う。

 一方、社会人向けの主な取り組みでは、専門的で実践的な教育訓練講座を経済産業大臣が認定する「第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)認定制度」を用意している。ITやデータを中心とした将来の成長が強く見込まれ、雇用創出に貢献する分野を対象にしたものだ。

 これまでに経産省が認定したReスキル講座は、すでに109講座に達しているという。「当初は100講座を目標にしていたが、それを上回るものになっている。AIでは44講座が認定されており、NECはNECアカデミー for AI(入学コース)と、20日間のデータサイエンティスト養成ブートキャンプを提供している」(孝忠氏)。

 NECでは、内閣府/文科省/厚労省/経産省と連携しながら、政府のAI戦略実現に貢献してきたと孝忠氏は説明する。大学・高専向け教育の拠点校を中心とした「数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアム」と連携して、すべての大学・高専生が学ぶリテラシー教育レベルのモデルカリキュラム作成に参加したほか、応用基礎レベルモデルカリキュラムの全国展開に関する特別委員会にも参加。またこれに先行して、課題解決型学習教材を拡充し、企業や自治体に展開しているという。

 さらに各大学個別の教育展開にも協力している。たとえば東京大学とは、データサイエンス人材を産学連携で育成するための産業界のコンソーシアム「UTokyo MDS コンソーシアム」を設立。ほかにも、横浜市立大学が主催する「WiDS TOKYO @ Yokohama City University」プロジェクトへの協力、滋賀大学とデータサイエンス分野における人材育成に関する連携協定の締結、大阪大学が受託した厚生労働省の「データサイエンス利活用教育訓練プログラム」への検討協力などの事例があると紹介した。

これまで培ってきたメソドロジーを大学や産業界にも展開していく

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